【書評】庄司興吉編著『歴史認識と民主主義深化の社会学』

【書評】庄司興吉編著『歴史認識と民主主義深化の社会学』

琉球新報 2017年4月16日 読書欄より

戦後捉え直し、未来示す

本書は、講座現代社会学(青木書店、1965年)と現代社会学事典(有信堂、1984年)等の編者を努め、長くマルクス主義社会学をリードし、2014年に逝去した故北川隆吉をしのんで、彼とゆかりのあった社会学者など13人の寄稿によって編まれた論文集である。

とはいえ、いわゆる追悼論文集の類ではなく、北川の業績も含めて、戦後日本社会学の到達水準を批判的にとらえ直し、それを踏まえてこれから進むべき途を示そうとした意欲的な本である。

各章の論題は、民主主義と社会学、社会運動、共同体・地域・企業の変貌、沖縄・アジア諸国に対する反省と貢献、日本から世界への国際意識と歴史認識の定期と、多岐にわたる。ここで本文の350ページに及ぶ全ての論文の内容を紹介する余裕はないので、沖縄について言及した2つの論文に関して触れておこう。

高橋明善は、差別と権力による抑圧を受けてきた沖縄における公共性は、人々の共同体やアイデンティティーからの解放ではなく、むしろこれらを根源として立ち上がってくるのではないかという、きわめて重要な問題提起を行っている。また、北欧の島嶼社会との比較も交えて古城利明が提示する、民族ではなく主権者としての沖縄の独立・自治・自己決定への展望にも耳を傾けたい。

ところで、著者の一人副田義也が振り返っているように、マルクス主義社会学は80年代以降、当初依拠していた19世紀由来の史的唯物論から脱却し、現代化を模索してきた(それをマルクス社会主義の解体とよぶ論者もいる)。というのも、産業の高度化に伴う中間階級の増大に加え、性、民族、環境、福祉といった、階級以外の分配現象が新たに問題意識に上がってきたからであった。

もちろん、旧ソ連・東欧諸国の社会主義体制の崩壊も大きく影響していよう。その意味で、かつて北川と近しい学問的関係にあった社会学者たちが、どのように現代日本社会を分析・診断し、未来への処方箋を書くのかといった視点で本書を読むのもよい。

(琉球大法文学部教授 安藤由美 評)

歴史認識と民主主義深化の社会学

【東信堂 本体価格4,200円】

 

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