【書評】溝上慎一著『アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性』

溝上慎一著『アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性

週刊教育資料2018年5月7・14日号 p.34より

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講義を受けるとなると、ノートをとるなど、いかにも講義を聴いているように見える「身体化」が生徒には確立されている。これに対して、AL(アクティブラーニング)では集中度が低い。そのため、教師には「講義の方が良い」という本音がある。このような「従来の教授学習の枠組み」を、その外にある「仕事・社会へのトランジション(移行)」につなぎ直すよう著者は提唱する。「主体的・対話的で深い学び」というALについても、県や学校によって相当な温度差があり、格差が生まれている。2030年、2050年社会を乗り越える準備である改革に対応できない学校に対して、筆者は警鐘を鳴らす。「(関係者の無知により)兼や地域、学校が衰退していくのは勝手だが、そこに居住し、大人になっていく子ども・若者の未来が危ぶまれるのには心が痛む」。そして、進学実績や就職率に一喜一憂するのではなく、ALに適した目標設定とアセスメントが必要だという。

AL改革の喫緊の課題は、「一方通行的な知識伝達型としての講義型を講義+AL型授業に転換すること」であり、そのことによって、主体的学習は、面白さなどの即自的な「人生型」へと深まると筆者は言う。

評者は考える。ときの教育政策に振り回されて、卒業までの教育に追い回される。これでは教育は創造の楽しさを失ってしまう。学校からのトランジション後の障害の充実を目指すとともに、二、三十年後の社会に向けた価値をともに創り出す、そこにこそ改革とALの神髄と楽しさがあると言えよう。

(前聖徳大学教授・西村美東士 評)


教育学術新聞 平成30年5月16日号 第3面より

アクティブラーニングの第1人者による実践と理論

著者は、アクティブラーニング研究と実践の第一人者である京都大学の溝上慎一教授である。主に全国の高等学校におけるアクティブラーニングの事例を丁寧に追いながら教育理論を混ぜて解説する。これらの教育改革はこれからの社会において必要な能力の獲得を促すものでもあり、著者は広く〈学校教育の社会的機能の見直し〉と位置づける。

大学教育、特に高大接続の担当者に多くの示唆を与えるだろう。

アクティブラーニング型授業の基本形と生徒の身体性

【東信堂 本体価格1,000円】

 

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