【書評】武田康裕編著『在外邦人の保護・救出―朝鮮半島と台湾海峡有事への対応』

武田 康裕編著『在外邦人の保護・救出』

(2021年、336頁、A5判、上製、税込4,620円(4200円+税))『朝雲新聞社』2021年10月28日 ブックレビュー より

 

日本は海外の切迫した緊急事態下から邦人を救出できるのか――。

グローバル化に伴い、世界中で活躍する在外邦人はテロ、暴動、パンデミックなどのさまざまな危険に巻き込まれるようになった。しかし、法治国家日本の現行法制下では、有事状況での邦人救出は不可能に近い。

編著者の武田康裕防大名誉教授を含む7人の安全保障の専門家が全7章を分担執筆。防衛省からは防研の門間理良地域研究部長が台湾海峡有事について、防大の山中倫太郎教授が我が国憲法や自衛隊法、諸外国の国内法制と運用、国際協働について執筆している。

本書は邦人保護・救出の足かせとなってきた国内法上の問題点と国際法との関係を明確化し、他国の事例と比較。その上で、近い将来、発生しかねない朝鮮半島と台湾海峡有事に焦点を当て、綿密なシミュレーションを通じて有事前の迅速かつ安全な邦人退避活動を模索・提案する。

法制度上の制約が壁となって思考停止になることに危機感を示し、「あらゆる事態を想定した在外邦人保護・救出の在り方をあらかじめ想定して準備しておく必要がある」と強く訴えている。(東信堂刊、4620円)

 

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