【書評】松村暢隆著 『才能教育・2E教育概論——ギフテッドの発達多様性の活かす』

『才能教育・2E教育概論—ギフテッドの発達多様性の活かす』

(2021年、360頁、A5判、上製、3600円+税)

全私学新聞2553号(4) 読書—新刊を紹介します より

特異な才能を持つ子が公正に扱われる

文部科学省は「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関す有識者会議」を設置した。著者松村氏はその委員を務める。

2Eとは、優れた才能と発達障害などを合わせもち、二重に特別な支援を要する子供を指す。アメリカでは1980年代以降2E教育の実践が広がり、近年日本でもようやく発達障害児の才能を伸ばすべきことが教育行政レベルで語られるようになり、前述の有識者会議も発足された。

本書では松村氏の著書、論文や文献・現地調査で調べてまとめ上げたものを集大成した。

アメリカの公立学校の通級指導教室や発達障害をもつ生徒を対象とした私立学校など多彩な2E教育の実践を紹介しながら、日本の2E教育の現状と課題を論じた。日本では法制を伴った2E教育は存在しないし、2E教育を理解したうえでの実践は極めて乏しい。2E児童・生徒の才能と障害のそれぞれへの対応、両者を統合した指導、学習が必要だと松村氏は説く。

才能児か一般の子ども、発達障害か定型障害か等、子どもたちをラベリングするのではなく、全ての子どもが最適な居場所で才能や特性を活かす学習活動が展開され、その中で特異な才能をもつ子が公正に扱われる整備の体制が望まれるとしている。

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