【書評】大谷泰照著 『日本の異言語教育の論点―「ハッピー・スレイヴ症候群」からの覚醒』

『日本の異言語教育の論点―「ハッピー・スレイヴ症候群」からの覚醒

(A5、240頁、2700+税)

全私学新聞 令和2年9月23日第2522号(4) 読書―新刊を紹介しますより

 

日本の異言語教育のあり方

著者は異言語教育の成否(効果)に関わる三つの基本的条件を挙げる。

第一は言語・文化的環境の条件で、「学習の母語と学習言語との間の言語・文化的距離および植民地などにおける異文化接触の経験度合いに関わる問題」。

第二に国の教育政策の条件で「教育に対する国の政策や熱意が異なれば、それは当然、異言語教育・学習の成否(効果)に大きく影響する」としている。

第三は教師と学習者の資質についての条件で、「教師の教育能力や教育法のあり方は、当然、異言語の教育・学習の成否(効果)に大きな影響をもち、文字通り教師の力量や努力そのものが直接問われる問題である」としている。

「第1章異言語教育論に不可欠な基本認識(1)」「第2章異言語教育論に不可欠な基本認識(2)」「第3章異言語教育論を支える教育姿勢」など5章からなる。

著者は「今日のわが国の異言語教育の実態は、ただひたすら現状を凝視することによっては決してみえてはこない」とした上で、「むしろ、『今日の』よりも歴史的に、『わが国』よりも国際的に、『異言語教育』よりも教育全般に、言いかえれば時間的、空間的、そして、重層的に一定の距離をおいて眺めてみることによって、はじめて事柄の実相が立体的に、そしていくらかでも浮かびあがってくる」と主張する。

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