【書評】羽田貴史著 『科学技術社会と大学の倫理』

科学技術社会と大学

(A5、296頁、3200+税)

全私学新聞 令和2年11月23日第2528号(4)読書―新刊を紹介しますより

研究倫理教育を制度化

 著者の羽田貴史・広島大学名誉教授・東北大学名誉教授が、2011年から始めた研究倫理に関する研究成果をまとめたもの。第一部「研究倫理の現状と課題」は「テクノサイエンス・リスク社会における研究倫理の再定義」「研究倫理に関する世界の動向と日本の課題」「全国調査から見る日本の学問的誠実性」「人文・社会科学分野における研究倫理の課題」。第2部「研究倫理マネジメントの手引き」は「研究倫理を理解する」「科学研究の社会的責任という倫理」などからなる。

 著者は大学・大学院は公共的性格を持ち、知の真実性を保証する研究倫理構築に大きな責任を持っているとした上で、「大学・大学院教育に研究倫理教育を制度化することは重要な課題であるが、日本の現実は大きく遅れており、高等教育研究においても、ほとんど未着手である」と憂える。

 また本書の切り口を「『責任ある研究活動』の推進であり、研究スタートは、研究倫理問題でしたが、海外の文献を読み進めるうちに、学士課程教育を含めた学生の倫理性全般を視野に入れなければならないと思うようになりました」と羽田氏。

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