豊富な事例と解説で通信制大学の「今」がわかる!
通信制大学が切りひらく、学びのあり方の新境地
コロナ禍を契機としたオンライン教育の普及は、オンデマンド授業の拡充など新たな学びのかたちを生み出し、通信制大学は新時代に突入した。通信制大学には、免許や資格取得、生涯学習を目的とする中高年層のみならず、高校を卒業したばかりの若年層の入学者が増えており、多様な背景をもつ学生が集っている。本書は、制度と歴史を概観する第1部、10大学における多様な実践を描く第2部、「越境」をキーワードに通学制大学との違いと重なりに光をあてた第3部から構成される。通信制大学の入門書であると同時に、多様化・流動化する高等教育の現在を捉え、新たな時代を見据えたまさに時宜を得た一冊。教育関係者はもとより、大学で学ぶことを考えているすべての人へ!

タイトル | 越境する通信制大学 |
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サブタイトル | 学びのゲームチェンジャー |
刊行日 | 2025年8月20日 |
著者 | 田口真奈・澁川幸加・寺尾謙・鈴木克夫 |
定価 | 3190円(2900円+税) |
ISBN | 9784798919751 |
Cコード | 3037 |
ページ数 | 248 |
判型 | A5 |
製本 | 並製 |
田口 真奈(たぐち まな)
京都大学大学院 教育学研究科 准教授
大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。1999年京都大学高等教育教授システム開発センター研修員、
2000年メディア教育開発センター(現・放送大学)助手、2003年同助教授、ハーバード大学デレッグボク教授学習センター客員研究員、2008年京都大学高等教育研究開発推進センター准教授を経て、2022年10月より現職。その他、日本教育工学会 副会長(編集長)、大学教育学会 理事。
専門は、教育工学、大学教育学。
澁川 幸加(しぶかわ さちか)
中央大学 文学部 特任助教・中央大学 教育力研究開発機構 専任研究員
京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博土(教育学)。
日本学術振興会特別研突員(DC2)を経て2022 年4 月より現職。
2020 年日本教育メディア学会論文賞、2024 年日本教育工学会研究奨励賞受賞。その他、日本教育工学会 代議員、日本通信教育学会 監事。
専門は、教育工学、大学教育学。
寺尾 謙(てらお けん)
神奈川工科大学 学生支援本部 教務課長・国際課長
芝浦工業大学専門職大学院工学マネジメント研究科修了。 技術経営修士(専門職)。学校法人慶應義塾、学校法人芝浦工業大学、学校法人三幸学園での勤務を経て、2019年に学校法人幾徳学園(神奈川工科大学)入職、2025年7月より現職。その他、八洲学園大学生涯学習学部非常勤講師、ウニベルシタス研究所客員研究員、日本通信教育学会事務局幹事、大学行政管理学会理事。
専門は、大学経営、通信教育、保育者養成等。
鈴木 克夫(すずき かつお)
桜美林大学 教育探究科学群 教授
慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。文学修士。学校法人駿河台学園、財団法人私立大学通信教育協会勤務の後、2003年から桜美林大学助教授、2009年から同大学院大学アドミニストレーション研究科(通信教育課程)教授を経て、2024年4月より現職。その他、日本通信教育学会会長。
専門は、遠隔教育論。
はじめに
第1部 「通信制大学」とはどのような大学なのか
第1章 「通信制大学」の制度としくみ 鈴木克夫
1.大学通信教育の現況
2.大学通信教育の法的根拠
3.「併設型」と「独立型」
4.大学通信教育の基準
5.大学通信教育の授業の方法
6.添削等による指導
7.卒業の要件
8.大学通信教育の教員組織
9.校地、校舎等の施設および設備
10.添削等のための組織等
11.大学設置基準の準用
第2章 大学通信教育における学生層の変化 澁川幸加
1.通信制大学生の主な特徴
2.戦後70年間にわたる大学通信教育と学生層の変化
3.なぜ若年層は通信制大学へ進学するのか
4.通信制大学の学生層の変化からみえる「学びのゲームチェンジ」
第3章 「印刷教材等による授業」とその実際 寺尾 謙
1.「印刷教材等による授業」の特徴
2.「印刷教材等による授業」の流れ
3.「印刷教材等による授業」の具体事例
4.「印刷教材等による授業」における制度的特徴
5.「印刷教材等による授業」における検討すべき課題
第2部 通信制大学の現場を知る
第4章 手厚い添削指導で支える法学の学び 澁川幸加
中央大学法学部通信教育課程
1.100年以上前から続く開かれた法学教育
2.「人生を変える8万円」
3.自宅学習を支える学習環境
4.法学研究者の登竜門としての通信教育
5.コロナ禍が与えたインパクトと通学・通信の歩み寄り
第5章 通学する通信制大学 寺尾 謙
日本大学通信教育部
1.若年層が進学し、通学する通信制大学
2.スクーリングの日大
3.「昼間スクーリング」の魅力と学生から選ばれる理由
4.「柔軟な学習スタイル」を実現する「昼間スクーリング」
第6章 通信制があることが当たり前の大学運営 澁川幸加
佛教大学通信教育課程
1.教師から僧侶の卵まで
2.通信制があることが当たり前の風土づくり
3.元先生・卒業生・現役生がつながる学習支援
4.通信教育課程もセットにした改革を目指して
第7章 短期大学から博士課程まで学びを切り開く 澁川幸加
聖徳大学通信教育部
1.女子教育と幼児教育の聖徳
2.手厚い資格支援と高い資格取得率
3.通信制でも「ピアノの聖徳」
4.コロナ禍による影響
5.第三の居場所としての大学
第8章 全世代を取りこぼさない学修サポート 寺尾 謙
創価大学通信教育部
1.全世代を取りこぼさない学修サポート
2.学修環境の全てをオンライン化させるサポート体制の構築
3.学生を孤独にしない取り組み、友人を作れる環境づくり
4.初年次からキャリア教育までの充実した学び
5.「全世代を取りこぼさない学修サポート」の源流
6.創価大学における通信教育と通学教育の境界
第9章 「一人ひとりの顔がみえる」教育をめざして 田口真奈
京都芸術大学通信教育部
1.巨大な芸術系「通信教育部」
2.100%オンラインの芸術教養学科の新設
3.コミュニティ形成を意識した取り組み
4.若年層への対応
第10章 「ハイフレックス授業」のパイオニア 寺尾 謙
八洲学園大学
1.通信制高校をルーツに持つ通信制大学
2.「教育の原点は家庭である」―日本初かつ日本唯一の「生涯学習学部」
3.八洲学園大学におけるスクーリング履修
4.八洲学園大学の学生支援
5.「八洲学園大学」が投げかける新たな大学の未来像
第11章 「通信制大学」から「デジタル大学」への先駆者 田口真奈
サイバー大学
1.構造改革特区による「新しい」大学の門出
2.デジタル大学ならではのオンライン環境
3.自己管理力を鍛えるしくみ
4.マイクロクレデンシャルの導入とオープンバッジの発行
5.日本の高等教育を「デジタル」でもっと強く
第12章 学生の声に応えるオーダーメイドな大学通信教育 寺尾 謙
大手前大学通信教育部
1.“STUDY FOR LIFE”という「建学の精神」の実践
2.オーダーメイド型のカリキュラム
3.方針転換による若年層も意識した科目配置
4.学生の声に応えるオーダーメイドなカリキュラム
5.学生満足度向上への取り組み
第13章 社会の教育力を活用する 田口真奈
新潟産業大学経済学部経済経営学科通信教育課程
1.ネットの大学managaraとしてスタート
2.通学課程と通信教育課程の連携
3.ベーシックコースを核に、「大学の外」と連携
4.正課・正課外での学び
5.カリキュラムとしてどのように成立させるのか
第3部 通信制大学と通学制大学の境界
第14章 事例からみた通信教育課程の特徴 田口真奈
1.「教材」を「授業」とするしかけ
2.授業を支える教職協働
3.通信教育課程における専任教員配置の有無
4.通信教育課程における学生の学びを促進するしかけ
第15章 越境する通信制大学 鈴木克夫
通信制大学はどこへ向かうのか
1.通信制大学の新展開
2.「オンデマンド授業」への懸念
3.時代遅れの「教員組織」の考え方
4.2022年の「大学通信教育設置基準」改正の過誤
5.「通学制」と「通信制」の区分はどうなるか
6.通信制大学の質保証
7.通信制大学の行方
第16章 越境する通学制大学 田口真奈
改めて「通学すること」の価値を考える
1.「通学制大学」において「通学によらない」授業が認められたのはいつ、なぜなのか
2.コロナ禍で拡大した「オンライン授業」
3.大学のもつ「場所性」の特徴
4.通信制大学の「場所性」
5.「居場所」としての大学
6.なぜ大学で学ぶのか、大学でどう学ぶのか
通信制大学を知るための文献紹介
おわりに 田口真奈